Buddhist Narratology Laboratory

「答えのない時代に、共に答えを作る」をモットーに仏典を読んでいきます。

『弘明集』を読む(6)

僧祐「序」(6)

 

まさに じゃくしょくの ともがらをして ぎべんに したがって ながく まよわしめ

将に弱植の徒をして偽弁に隨って長く迷はしめ、

なぜなら、知識のない者たちに、偽りだらけの理論を教え込むことによって、〔彼らを〕一生迷わせてしまうことになるし、

 

 

とうちの ともがらをして じゃせつを おうて ながく おぼれしむ

倒置(1)の倫をして邪説を逐ふて永く溺れしむ。

また、非常識な者たちに、〔彼らにとって心地よい〕破天荒な理論ばかりを聞かせて、〔彼らを〕一生勘違いさせてしまうことになる。

  1. 【倒置】順番をさかさまにして置くこと。主に言語表現のひとつとして使われるが、ここではものの順序を逆にすることから、非常識な人物を表している。

 

 

これ ゆうとの おちやすき ゆえん

此れ幽塗の墜ち易き所以、

これこそ、暗闇の世界(地獄)へ転がり落ちやすい理由であり、

 


じょうきょうの のぼりがたき ゆえんの ものなり

浄境の陟り難き所以の者なり。

清らかな世界(浄土)へ昇っていくのが難しい理由なのである。

 

 

《今回のポイント》

無知な者は、理論に言いくるめられてしまうし、非常識な者は、常識はずれな思想を受け容れてしまい、その色に染められてしまって、抜け出せなくなる。こういった者たちが、地獄に落ちやすい者たちであり、浄土へは行けない者なのである。