Buddhist Narratology Laboratory

「答えのない時代に、共に答えを作る」をモットーに仏典を読んでいきます。

『弘明集』を読む(23)

牟子『理惑論』(14)仏伝③

 

ゆめに びゃくぞうに のる みに ろくげ あり
夢に白象に乗る。身に六牙有り。
夫人は、夢のなかで白象に乗っていた。〔その白象には〕牙が六本生えていた。

 


きんぜんとして これを よろこび ついに かんじて はらむ
欣然(1)として之を悦び、遂に感じて孕む。
夫人は、非常にうれしい気分になった。その瞬間、懐妊したという。

  1. 【欣然】よろこんで物事をするさま。

 

 

しがつ ようかを もって ははの みぎわきよりして うまる
四月八日を以て、母の右脇よりして生る。
四月八日、〔お産のために里帰りをしていた途中、休憩をしていたルンビニー園において、夫人は急に産気づき、仏は〕夫人の右脇から誕生した。

 


ちに おちて いくこと しちほ みぎてを あげて いわく
地に堕ちて行くこと七歩、右手を挙げて曰く、
地に降り立った仏は、七歩歩き、右手を挙げて〔次のように〕おっしゃった。

 


てんじょうてんげ われに こゆる もの あること なし
天上天下、我に踰ゆる者有ること靡しと。
「天界にも地上にも、わたしを超える者はいない。」(天上天下唯我独尊)

 

 

《今回のポイント》
釈尊の母、摩耶夫人は、夢のなかで白象に乗り、そのことを喜んだ瞬間に懐妊したという。また、「天上天下唯我独尊」。有名な言葉である。これも産まれてすぐの赤ちゃんが話せるわけはないので、偉大性の比喩表現であろう。