Buddhist Narratology Laboratory

「答えのない時代に、共に答えを作る」をモットーに仏典を読んでいきます。

『弘明集』を読む(26)

牟子『理惑論』(17)仏伝⑥

 

とし じゅうしちにして おう ために のうきす なこくの おんななり
年十七にして、王為に納妃す。那国(1)の女(2)なり。
〔太子が〕十七歳のとき、父である白浄王(浄飯王)は、〔太子のために〕お妃さまを迎えた。隣国の姫であった。

  1. 【那国】隣国。
  2. 【女】釈尊の出家前の妃。名前は耶輸陀羅(やしゅだら)という。

 

 

たいし ざすれば すなわち ざを うつし
太子坐すれば、則ち座を遷し、
太子は、座るときは、離れて座るようにし、

 


いぬれば すなわち とこを いにす
寝ぬれば、則ち床を異にす。
寝るときは、別の寝床で寝るようにしていた。

 


てんどう はなはだ あきらかにして いんようにして つうじ
天道(1)孔だ明かにして陰陽(2)にして通じ、
〔しかし、〕自然の摂理というものは、いかなるときもあるべきようになるものであって、陰と陽は〔不思議と〕通じ合うものであり、

  1. 【天道】自然の摂理。
  2. 【陰陽】天地間にあって、互いに相反する性質のもの。天・男・日・昼・動・明などは陽、地・女・月・夜・静・暗などは陰とされる。

 

 

ついに いちなんを いだく
遂に一男を懐く。
ついには、一人の男児を授かることになった。

 


ろくねんにして すなわち うまる
六年にして乃ち生る。
〔しかし、なかなか産まれず、〕六年かかって、産まれた。

 

 

《今回のポイント》
太子は、父王に結婚をさせられるが、最初は避けるようにしていたことがわかる。しかし、ついには一男を授かることになる。一説には、妊娠してから出産まで六年かかったという。