Buddhist Narratology Laboratory

「答えのない時代に、共に答えを作る」をモットーに仏典を読んでいきます。

『弘明集』を読む(7)

僧祐「序」(7)

 

ゆう まつがくを もってすれども こころざし くごに ふかし

祐、末学を以てすれども、志弘護に深し。

わたくし僧祐は、まだまだ浅学の身ではあるが、〔仏法を〕広め、守ってみせるという意気込みに関しては、誰にも劣らない。

 

 

せいげん ふぞくをして こころに ふんがいす

静言(1)浮俗をして、心に憤慨す。

だから、うわべだけの偽物の言葉や、〔欲望まみれの〕浮わついた俗世間に対して、どうしても腹が立ってしかたない。

  1. 【静言】実質を伴わない表現上だけの言葉。下心のある言葉。

 

 

ついに やくしつの びかん さんせいの よかを もって

遂に薬疾の微間、山棲の余暇を以て、

そこで、病気療養の合い間や、〔人里離れた〕山中での隠遁生活での余暇を使って、

 

 

ここんの みょうへんを えらび どうぞくの がろんを すぶ

古今の明篇を撰び、道俗の雅論を総ぶ。

古いものから最近のものに至るまで、論旨明快な著作を選び出し、〔仏道に邁進する〕出家者や在家者たちのすばらしい論文集としてまとめてみた。

 

 

《今回のポイント》

ここでは、浮薄なことに憤りを感じているとあるように、僧祐自身の仏法に対する矜持の気持ちが語られている。また、僧祐が病気療養をしていたとあり、『弘明集』作成時の様子が述べられている。