Buddhist Narratology Laboratory

「答えのない時代に、共に答えを作る」をモットーに仏典を読んでいきます。

『弘明集』を読む(8)

僧祐「序」(8)

 

その こくい じゃを きり けんげん ほうを まもる あれば

其の刻意邪を剪り、建言法を衛る有れば、

〔その選んだ基準としては、〕論主の主張が、邪説を刈り取るものであったり、仏法を守ろうとする言葉が書かれてあれば、

 

 

せい だいしょうと なく まったく とらざるは なし

製大小と無く畢く採らざるは莫し。

作品が長編であろうと短編であろうと関係なく、悉くすべてを収録した。

 

 

また ぜんだいの しょうしが しょき ぶんじゅつは

又、前代の勝士が書記文述は、

また、前代の優れた人たちの記録や著述などについても、

 

 

さんぼうに えき あれば また みな へんろくし

三宝に益有れば、亦皆編録し、

〔仏・法・僧の〕三宝に有益なものがあれば、これもまたすべて収録し、

 


るいじゅう くぶんし つらねて じゅうよんかんと なす

類聚区分し、列ねて十四巻と為す。

それらを種類別に分類し、整理したところ、十四巻となった。

 

 

それ みちは ひとを もって ひろまり きょうは ぶんを もって あきらかなり

夫れ道は人を以て弘まり(1)、教は文を以て明らかなり。

思うに、真理(道)は人によって広められ、教えは著作によって明らかにされていく。

  1. 【道は人を以て弘まり】『論語』衛霊公篇の言葉、「人能く道を弘む、道の人を弘むるに非ず」に基づく。

 

 

みちを ひろめ きょうを あきらめるが ゆえに これを ぐみょうしゅうと いう

道を弘め、教を明らめるが故に、之を弘明集と謂ふ。

真理(道)を広め、教えを明らかにする〔ための論文集〕という思いを込めて、この書を『弘明集』と名づけた。

 

 

《今回のポイント》

僧祐は、「仏法を守る言葉があるかどうか」というのを基準に、さまざまな作品を集めていったとある。つまり、このことが僧祐にとって一番重要なことであったということである。また、「三宝に有益なもの」をすべて収録したともあり、仏法の流布(つまり、仏法が滅びないこと)を重視していたことがわかる。最後に、『弘明集』という書名がつけられた意味を説明している。