『弘明集』を読む(17)
牟子『理惑論』(8)序伝⑧
ぼうし いわく ひれき ふくれき けんぐうの ひ ひさしければ
牟子曰く、被秣服櫪(1)、見遇の日久しければ、
牟子は〔交州の長官(州牧)に〕次のように答えた。「厩舎に飼われている馬のように、〔わたくしも〕長い間、ご恩を受けている身でありますから、
- 【被秣服櫪】まぐさをあてがわれて厩につながれ、面倒をみてもらっている馬の様子。ここでは上司に世話になっているさま。
れっしは ぼうしん かならず ていこうを きす
列士(1)は忘身、必ず騁効(2)を期す。
烈子(主君に殉ずる者)〔であるわたくし〕は自分の身を顧みず、〔この任務を〕必ず成功させてみせます。
- 【列士】名誉のために命も捨てる人物のこと。
- 【騁効】馬を走らせ、手柄を立てること。
ついに げんに まさに はっすべしと
遂に厳に当に発すべしと。
目的を達成するために、万全の準備を整えて出発いたしましょう。」
たまたま その はは そつぼうし ついに いくことを はたさず
会々其の母卒亡し、遂に行くことを果さず。
〔しかし、そのとき〕偶然、牟子の母親が亡くなり、結局、出発することができなくなってしまった。
《今回のポイント》
牟子も、交州の長官(州牧)のこの話を聞かされ、「身を捨ててでも、軍隊が通過できるようにいたします」と牟子は答え、出発に向けて着々と準備を進めていた。そのとき、二度目の運命のいたずらが牟子の運命を狂わせる。